嘉陽煤鉱 芭石鉄路 2003年(平成15年)11月

中国、四川省楽山市の近郊、石渓(終点駅)から黄村井(起点駅)までおよそ20Kmを結んでいる762ミリ軌間の鉄道が芭石鉄路である。いわゆる鉱山鉄道なので貨物輸送が主で途中駅の躍進までは電化され、石渓〜躍進間の貨物列車は電機牽引で運行されている。躍進から黄村井までは非電化でC2型蒸機が2軸貨車やマッチ箱客車を牽いて運行している世界的に見てもかなり奇特な鉄道である。
では何故このような旧態依然とした鉄道が21世紀まで生き残ったかと言うと、躍進から先は道路らしい道路は無く、途中の仙人脚の手前まで乗用車では走れないような悪路が有るのみなので鉄道が唯一の交通手段なのである。実際どの列車もよく乗っており、日本のいわゆる過疎ローカル線とは比べ物にならないほど車内は盛況であった。我々は3日間芭溝という村に滞在したが、全くクルマの騒音が無いというのはこんなに静かなものかと実感した。
運行形態は途中の蜜峰岩でスイッチバックするのだが、両端駅とも転車台が無いので石渓から蜜峰岩に向かう時は常にバック、逆に石渓に向かうときは常に前向き。蜜峰岩から黄村井に向かう時は常に前向き、逆に蜜峰岩に向かう時は常にバックになる。つまり、蜜峰岩を発車する列車の機関車は常に前向きと言うことになる。
ところで、これほど廃止が取り沙汰されているにも拘らず、「これだ!」という廃止理由が聞こえてこない。中国も急速に無煙化が進んでおり蒸機のメンテナンスが困難になって来たのも一因だろう。ましてやナローの蒸機となれば尚更である。また、2008年の北京オリンピックへ向けて中国全土で古い物を淘汰するという空気が支配的になっているのも事実である。
しかし、黄村井には手押しのトロッコをひっくり返してホッパーに落とし込むといったこれまた前時代的な光景が展開する炭鉱があり現在も操業中である。そこからの石炭は当然芭石鉄路で運ばれるのだが、廃止されてしまえばトラックで運ぶしかない。ところがそう簡単に転換が出来そうも無いのである。
鉄道関係者氏は「線路をはがして道路にするのは簡単だが、トンネルが問題だ。ナローだから断面が小さく大型トラックやバスは通行が困難だ」と言っていた。これは尤もだと思う。実際トンネルを歩いてみたがやはり小さい。マイクロバス程度が限界と思われた。輸送量を考えるとマイクロでは苦しいと思うし、貨物輸送も小型トラックでは無理が有ると思うのだが・・・
しかし、中国はやるとなったら一気にやってしまうお国柄である。12月廃止は無いと思うが予断を許さないのは事実である。廃止される前に是非もう一度訪ねてみたい鉄道である。

11月23日(日)

石渓を5:30の一番
列車で発ち、約1時間で芭溝に到着する。こちらの日の出は日本より遅く7時でもまだ真っ暗だった。よって1本目は写真は諦めビデオのみ撮影して、1キロほど先の黄村井駅(起点駅)に移動して2本目を待つことにした。芭石の列車は客レなので時間通りに来てくれるので大変有り難い。更にこの日は臨貨が有り幸先よいスタートとなった。黄村井駅の先には噂の手押しトロのある炭鉱があり盛業中であった。但し、あまり大勢で押しかけると追い返されるらしいので数人ずつ散らばって、かつあまり深入りしないように撮影してさっさと退散した。(※最新情報によると我々の訪問後程なく全面撮影禁止になったらしい)
3本目は駅間の俯瞰できるポイントで待っていたのだが、汽笛は聞こえたものの一向に列車が来ない。そのうち線路上を大勢の人が歩いてきたので不審に思い「何かあったのか?」と訪ねると「汽車が壊れた!」との答が返ってきた。それでは来るわけが無いのでカメラを撤収して芭溝駅へ向かった。するとそこには左側のロッドを外されたC2が・・・・バルブギアの故障のようで片肺でしか走れない様子。とても運転続行は不可能なので芭溝で運転打ち切りとなり返しは救援機関車を待つことになった。1時間ちょっとで救援機関車が到着。予定より約2時間遅れで石渓へと戻っていった。
最終の4本目は客車が一編成しかないので当然影響を受け1時間半ほど遅れた。バルブ狙いで駅で待機していたのだが、もし混合列車だと機関車が構内に納まらないので心配だったが幸い客車のみの編成だった。裸電球が3個のみと言う極めて悪い条件ではあるが、それもまた芭石の個性と言うことで見えるままに撮影した。そして、おそらく芭溝唯一の外国人が泊まれる施設であろう袁四飯店に投宿、白酒を酌み交わし招待所の夜を満喫した。

黄村井(起点)駅
線路の終端部にあるホッパー
上で手押しトロッコをでんぐり返して備蓄する
炭車に乗っかってご機嫌なぼのぼの
混合列車が到着
回送されてきた空車は手で押してホッパーまで移動する C2型のサイドビュー ニブロクのカマとしてはデカい
黄村井の炭鉱 噂の手押しトロッコが稼動中

黄村井〜芭溝間
軒先を掠めてC2が行く 何十年もタイムスリップしたような光景が展開する

芭溝駅
バルブギア故障で運転不能になったC2 既にロッドが取り外されている
黄村井まで行く荷物だったのだろうか?慌しく全て降ろしていた 編成中央に連結されているボギー車の内部
ご覧の通り家畜用の檻と僅かな椅子があるだけで殆ど荷物車
1時間ちょっとで救援機関車が到着
芭石鉄路の沿線は子供が多い それでも皆一人っ子らしい
光源の少ない芭溝駅でのバルブは条件的になかなか厳しい
初体験のゲストハウス この次はいよいよ民家か?

11月24日(月) 

この日は芭石鉄路のハイライト、仙人脚のΩループを訪ねるために朝イチの石渓行に乗って蜜峰岩まで行き、そこから線路伝いに徒歩で撮影ポイントまで向かうことにした。
鉄道が唯一の交通手段な訳だから自ずと歩くしかないのだが、その唯一の交通手段が撮影対象なので当然乗ることは出来ない。結局芭溝まで途中撮影しながら歩いて戻ることが決まった。距離にして10キロ、普段歩いていないので果たして歩けるかどうか不安だったが、な〜に、成せば成るものである。翌日の筋肉痛も無かった。42歳、まだまだイケる。

蜜峰岩駅
朝イチの返しの客レと交換した臨貨 小休止して火床整理 火室から放り出されたまだ火のついた石炭ガラ コンロにでも使うのだろう
近所のオバちゃんがスコップもって拾いに来ていた
臨貨が発車 8時近くなってもまだこの暗さ、いかんともしがたい! こんな撮り方しか思いつかなかった

蜜峰岩〜仙人脚間
芭石鉄路と言えばここ、と言うくらいの定番撮影地Ωループ この日は運良く混合列車だった
忙しいブラスト音とともにC2が体を揺すぶって通過して行く 貫通ブレーキが無いので貨車にブレーキ掛が乗っている
仙人脚駅を発車した石渓行混合 さっき空車だった貨車に石炭が満載されている

仙人脚駅
恐らく傍らの竹を積むのであろう 無蓋車が1両停まっていた 駅名票は有るのだが錆びてて読めやしない
どこの駅にも必ず売店は有った 但し、売っているものはかなり怪しい

樵バ駅(バは漢字が出てこない、土へんに貝)
ここも駅は売店だった 駅裏手の民家では自家製ソーセージを天日干ししていた
街頭で麻雀に興じる人達 しかし、牌がデカい・・・ ここの村もやはり子供が多かった 屈託の無い笑顔が印象的だ
食事をしている間に臨貨があったらしく、駅に戻ったら程なく返しがやって来た ここで客レと交換するようだ
ここでも火床整理をしている模様 この後も至るところでこの光景を目撃した なんと走行中にも火のついたガラを放り出していたのにはたまげた
客レが到着
芭溝へ向けて発車 しかし何度見てもスゴい客車である

樵バ〜芭溝間
樵バ駅を出るとすぐに昔のホッパーが残っている またもやFが取れずに流し撮り

この後、芭溝に戻って最終列車のバルブにトライしたが雨が降り出しさんざんだった。当然、アップできるような写真は御座いません。合掌・・・・・

11月25日(火)

なかなか「これだっ!」という手応えが無いまま遂に撮影最終日になってしまった。どうせロクに撮れないので朝イチの列車はパスして明るくなってからまず市を訪ねた。
朝食を摂ろうと行き付けの?食堂へ赴くと同業者に遭遇、いろいろと情報交換しなかなか濃い朝食会となった。そうこうしてる内にがらんとしていた広場はいつしか朝市会場になっていた。見たことの無いようなものが沢山並んでおり見てるだけでも楽しい。ぼのぼのが特に興味を持ったのは生きた鯉を売っていることだった。是非食してみたいと思い値段交渉をしたものの外国人という事でハナッからボられ(通常価格の4〜5倍)、買うことは叶わなかったが、鯉はこの日の夜成都への移動途中、楽山市の食堂で姿揚げあんかけを食することが出来た。日本には無い味付けで大変美味であった。どうやらぼのぼのは南の味付けが体に合っている様だ。
列車の撮影は初日撮り損なった俯瞰ポイントで2本目から開始した。

芭溝の村
袁四飯店の向かいが郵便局だった
この日は年金支給日だったようでジィさんバァさんが大勢集まっていた
村のあちこちでアヒルに遭遇 芭溝の名物の一つがアヒル料理だった
ボられたため買えなかった鯉 売り子のオバちゃんが水を掬っては入れを繰り返し、溶存酸素量を確保していた(ホントかよ!)

芭溝〜黄村井間
今日は予定通り来てくれたもののやはり暗い 180分の1秒でも止まってくれなかった 改めて中判+広角レンズのマット面上での移動距離は侮れないと実感した その返し、絶対止まらないのでまたまた流し撮り
芭溝の銭湯に燃料を運んできた炭車 ここまで持ってくるのも、取り降ろしも全て人力で行われる

樵バ〜芭溝間
この列車の返しで石渓に戻るのであまり遠くまで行けず、芭溝からトンネルをひとつ抜けた場所で迎え撃った


マッチ箱客車に乗って石渓へ戻る
乗車券 2元と書いてあるが我々外国人はナント30元!

石渓(終点)駅
石渓駅のホーム 殆ど市場の様相
出発準備をするC2 既に薄暮バルブの明るさ お約束の火床整理
最終黄村井行が発車 言わずもがなFは取れずまたもやこうするしか・・・・
石渓から成都へ移動中、楽山市で鯉を食した後見つけた鯉の乗り物 サカナ飼いとして乗らずにいれなかった

11月26日(水) 早朝、成都から上海経由で帰国 機内では既に次回の芭石訪問のプランを考えていた
中国の航空会社の機内食もだいぶ変わってきた
但し、ビールは相変わらずヌルい
上海ではタラップで搭乗 大都会の空港では珍しくなった